キムラヨウヘイ 安田記念の有力馬診断

※印は[★激走候補~△やや有力~▽やや軽視~―無印」を表します

―グァンチャーレ牡7松岡58北出(栗東)
前走マイラーズCでは池添騎手はその挙動からも当初逃げる予定は無かったはずだが、馬なりで先頭に立つと誰も逃げないのでそのまま何もせず進めたら絶好の超スローペースの先頭競馬が叶ったというモノ。断然人気の強力先行馬ダノンプレミアムも、前哨戦だった分もあってか無理に勝ちに来ないで相当甘やかしてくれた分で…相当に展開利を得られての2着激走。

コノ馬のスイートスポットとして「京都コース」と「内で競馬をすること」の2点がありますが、マイラーズCでは使える脚が長くないコノ馬にとっては超スローペースでのラチ沿い競馬というのは得意領域でもありました。

今回安田記念ではまず前走のパフォーマンスだけでは果たしてというのと、そしてスローペースは有り得ないレースだけにコノ馬の理想ペースから外れるパフォーマンスを落とす可能性が高い局面という見方になります。


△フィアーノロマーノ牡5北村友58高野(栗東)
前走ダービー卿CTはマルターズアポジーにエイシンティンクルが絡んで行く前に厳しい流れ…それにまともに付いて行きながらも他の展開有利差し勢を封じるパフォーマンスは秀逸です。
ただし、ダービー卿CTや秋の同舞台条件重賞京成杯AHというレースは、割かし鮮やかな勝ち馬が誕生するのですが、それのそれ以降の戦績は意外な程に振るわないという傾向があります。フィアーノロマーノにしてもこれまで東京不振という馬だけに、どこまで融通性ある能力を秘めているかはやや疑問も残る点で全幅の能力信頼とまでは?


★インディチャンプ牡4福永58音無(栗東)
昇級初戦だった2走前東京新聞杯では、単純に力が違ったというパフォーマンス。
着差こそ2着以下とは小差ですが、その高速時計でも他上位馬とは違って直線での余裕しゃくしゃくの手応えで、そこから楽に抜け出すと後は勝利を確信した鞍上が緩めての入線。本来ならば後ろから脚を使った2着馬3着馬がゴール直後の脚色は勝って然るべきところでしたが、それについても最後詰められたはずのインディチャンプの方が脚色優勢だった点からもどこまで行ってもインディチャンプが余力大で抜かせなかったはずと言えます(2着以下のその後戦績がさほどだとしても、それらとは格が一枚上なのがコチラだというコトです)。

前走マイラーズCでは『ただし、この家系の馬はアウィルアウェイ然り前向き過ぎる面もあって、前哨戦スローペースで下手を打たなければ…まあ福永騎手ならば大丈夫と思いますが』と書きましたが、結果的にはその超スローペースでの折り合い問題が全てでの敗戦を喫してしまいました。

「トキオリアリティーのきょうだいの前走距離変更別成績」
◆前走平地距離別集計
前走平地距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値
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今回延長 5- 6- 3- 41/ 55 9.1% 20.0% 25.5% 25 52
同距離 9- 4- 7- 37/ 57 15.8% 22.8% 35.1% 134 89
今回短縮 15- 2- 5- 30/ 52 28.8% 32.7% 42.3% 726 186
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上記は当家系の距離ローテ別の戦績ですが、距離短縮もモチロンそれと同効果あるペースアップ戦の方が能力発揮し易いという面もあります。
前走マイラーズCからのペースアップ必至の安田記念はその好機ですし、また仕上がり面でも確実にワンランク上が見込めますので…巻き返しの目は大いに有り得るはずです。


▽アエロリット牝5戸崎56菊沢(美浦)
まずは昨年安田記念時の有力馬診断を参照↓
『左回り大箱コース替わりというプラス要素はありましたが、それ以上にこれまで全戦騎乗横山典Jの手綱が離れるというマイナス要素と、それに加えて馬の持ち味を引き出せない戸崎Jの手綱というマイナス要素があり…騎手のさじ加減一つで激走まであったと見ていますが、出た結果としては4着止まりという残念なモノに。
まあ、戸崎Jじゃなくても暴走馬にテン乗りでは誰でも慎重な騎乗になるのは仕方無いですが、あんなスローペースを2番手からという正攻法競馬では…それが難なくできる馬ではありませんので折り合い面で怪しい所は見せつつでしたし、そしてそんな位置取りから数多のキレ自慢馬を抑えての最先着が本当に想像できたのでしょうか???』
・・・
昨春シーズンはVMではSペース先行で4着止まり、安田記念では相手強化にもかかわらずMHペース先行で2着激走…コレがコノ馬の本質です。
昨秋シーズンでも後続を待たずのモレイラ流騎乗の毎日王冠では逃げ切り完勝で、逃げ競馬に不慣れな(昨秋来日時も逃げたのはこの時のみ)ムーア騎乗のマイルCSでは良さを引き出せずの完敗。

もう一つのポイントは輸送云々で、それは以下のツイートの通り
https://twitter.com/jou_syou/status/1126043822595629056

前走VMは流石に上記とは別要因の海外遠征帰り初戦もあっての5着止まりでしたが、叩き2戦目となるココは改めて上記の一致性を問いたいです。

となると、直近走で馬鹿逃げ凡走後(コントロール重視の騎乗も強いられる)+乗り替わり戸崎騎手+昨年程は自ずとはペースが流れそうにないメンバー構成で、決して状況は良いとは言えない点でどうか。


―エントシャイデン牡4田辺58矢作(栗東)
昇級後の2走阪急杯&京王杯SCは共に詰まり0.5秒差で情状酌量余地はある負け方でしたが、だとしても共にG1級で見直せるレベルの走破内容でもなく・・・。


―ケイアイノーテック牡4幸58平田(栗東)
まずは2走前根岸S有力馬診断を参照↓
『コノ馬はNHKマイルCのレース振りみたく助走距離が欲しいタイプの差し馬で、前走阪神カップでも初距離千四を忙しそうにして全く届かずのレース振りでした。それを見る限りでは距離千四適性には疑問アリです。

それよりもダートがあるのか否かが全ての局面でしょうが・・・母ケイアイガーベラがダート馬だったからとダ適性期待票が多い様ですが…実際には母ダ出身著名馬のディープ産駒はアゼリ仔やドバイマジェスティ仔など大勢居ながらも、現状はダ短距離出世馬は皆無という事実の方が重いでしょう。
ケイアイガーベラが国内で知名度あるダート馬だったせいでのニワカ過剰人気には飛びつきたくない。』
・・・
2走前根岸Sはダート適性と初砂被り競馬の分での大敗でノーカウント相当。
3走前阪神カップは距離不足千四と展開不利バイアス不利での6着止まり。
4走前走前マイルCSではキレ負けと追走力不足での敗戦。
どうも近走を見る限りでは生粋マイラーとしてのスピード能力には疑問アリで、その頂点レースである安田記念では厳しい。


―サクラアンプルール牡8横山典58金成(美浦)
まずは前走日経賞時の◎見解を参照↓
『コノ馬については毎度書いています様に、主に短い直線コース・小回りコースでこそ生きる一瞬の脚が身上という馬…ぬるま湯レースで一瞬の脚を使ってこそ本領発揮という馬です。
OP昇級後では実際に小回りコース且つ後傾度強ラップ戦[1-2-1-1]で、それ以外[0-1-0-7]となっています。
前々走有馬記念は近年よりも大幅に持続力が問われるレースとなり、それはつまりコノ馬の適性とは大きくズレるレースに…それで得意小回りコースでも前傾ラップ戦となった分で脚が続かずの掲示板外止まりとなった形でした。

昨秋の果敢G1連続挑戦は共に実らずの結果とはなりましたが、それでも秋天でも有馬でも運悪く向かない方のレースとなった中でもキチンと一瞬脚は見せられていますので…あとはレースの流れが自身適性にさえ噛み合いさえすれば、いつでも巻き返し可能性の期待は当然懸けられてきます。

それは小回りコース・スローペース想定・内目枠順・名人騎手に乗り替わりのココならばと言えるでしょうし、脚部不安抱えて坂路&プール調教だった昨年とは雲泥の充実調教過程で挑める本年も十分に期待して良さそうです。』
・・・
その前走日経賞は予想通りに内回り・内枠・スローペースという条件好転コンボでパフォーマンスを上げて3着に食い込んだという結果に。ただしそれでも3着止まりだった辺りは多少加齢による劣化は否めません。
上記条件が揃えばまだまだ好走級が狙える馬とは見ていますが、コースも距離もペースも領域から飛び出る今回安田記念では流石に・・・。


△アーモンドアイ牝4ルメール56国枝(美浦)
牝馬3冠制覇…初古馬相手のJCでは衝撃のレコード走…初海外の前走ドバイターフでも快勝。
まず能力的な面については言わずもがなですし、またドバイ遠征でもJCの距離二四よりも距離千八に活路を見出された通り、本来の適距離も中距離だと目されている馬です。
Hペースで流れて本質的なマイル適性が問われた時に、それと逆の競馬を指向してきたコノ馬の取りこぼしは有り得てきますが、本年のメンバー構成戦と今の差し脚生きる東京芝状態ならば格の違いをこのマイル戦場でも見せ付けてくれる可能性の方が高いです。


△サングレーザー牡5岩田康58浅見(栗東)
ミナリク騎手を日本人騎手で例えるならば“チェコのウチパク”
パワー型の騎乗が特徴で、日本芝の繊細な競馬にはイマイチ適応できていません。
それを如実に表すデータとしては「芝△」「芝差し追い込み×」「芝小型馬×」というモノで、芝よりもダート、芝ならば位置取りゲームや大型馬を積極策からパワーで粘り込ませる形ならば好走できても、いわゆるキレる馬の末脚を引き出すという騎乗はほぼ見られません。
「芝」「差し馬」「非大型ディープ産駒」という属性を持つサングレーザーの前走大阪杯にしても、それとは相性最悪と見られるそのミナリクJの騎乗だったとすれば…(それにしてもの負け方なので他の要因もあったかも知れませんが)。

今回はそんなミナリクリターンの絶好機とも言えそうです。
ただし、マイルCSと安田記念は同じマイルG1でもレース質の齟齬から相関関係が強くなく、実際にマイルCS人気薄激走⇔安田記念人気凡走の歴もあるコノ馬は前者適性馬と見られる点で激走まではどうか。


▽ステルヴィオ牡4レーン58木村(美浦)
まずは2走前中山記念回顧抜粋を参照↓
『中山マイスターでその中でも最も合う中山千八G2のココは一つの勝負所だったウインブライト&今回騎乗の為に復帰を早めた松岡J、3歳春以降は勝ち切れずで結果を出さねばコンビ継続も危ういラッキーライラック&石橋脩、一応は大阪杯との連続騎乗予定もノーザンFの力学として物足りない結果にでもなれば鶴の一声で一戦限りも有り得る立場の丸山J&ステルヴィオ・・・これら今回中山記念に執念を燃やす人馬のワンツースリー決着。それは決してオカルトでもなくて、本来前哨戦的位置付けであるレースですから、
通常ならば余裕残しのデキで良い所ナシだったディアドラや、例の如く次本番を見据えての騎乗で早仕掛けを避けたスワーヴリチャードを尻目に、この速いペースでも本気で勝ちに行く位置取り&仕掛けが結果を左右したという決着でした。』
・・・
前哨戦を勝ちに来て3着だったステルヴィオよりは、そうではなく好走止まりだった馬の方を買いたい(評価したい)というのが本番レースの基本です。前走大阪杯は距離長と小回りコース適性もあったでしょうが、昨年秋からパフォーマンス更新できていない辺りは評価し辛い点。

また、サングレーザーの欄でも書いた通り、マイルCSと安田記念の非相関関係から、まして昨年の異例SペースマイルCS勝ち馬であるステルヴィオは安田記念タイプとは少し違いだろうと。


▽ペルシアンナイト牡5Mデムー58池江寿(栗東)
そしてサングレーザーやステルヴィオ以上にマイルCSキャラが強いのがコノ馬です。
「3歳秋マイルCS激走→4歳春安田記念凡走→4歳秋マイルCS激走」という歩みで、非高速決着の距離マイルで強さを見せているだけに本年安田記念でいきなり走ってくる姿はイマイチ想像できません。


―スマートオーディン牡6池添58池江寿(栗東)
2走前阪急杯は昨年同様に大渋滞レースに…昨年も内枠馬の善戦は目立ったのですがそれよりもスムーズな競馬をできた馬が1~3着までを埋めるという決着でしたが、本年も3着以下の殆どがスムーズさを欠いた中で大外一気スマートオーディン&スンナリ先行レッツゴードンキのワンツー決着でした。
後続との着差については、その後続がまともに競馬できていない馬ばかりという事情がありますので過信は禁物です。

またスマートオーディンは復帰後は折り合いを欠いて自滅競馬だったのが、そこでは距離短縮とスムーズ大外差しが功を奏しての久々激走でした。
その次走の京王杯SCでは距離千四でもスローペースならば歯が立たずの結果を露呈して、そこから距離延びてHペース必至でもないマイル条件というのは楽ではない。


回避タワーオブロンドン牡4○○58藤沢和(美浦)
ドン詰まりと折合△のNHKマイルCと、藤沢和雄厩舎の不得手(≒勝負しない)冬場重賞で太目残りだった東京新聞杯の2戦を除けば、常に最高パフォーマンスを見せている馬。
前走京王杯SCでは馬体絞れて尚且つ距離短縮ローテ千四での順当勝利と言えるでしょう。
今回安田記念の東京マイル条件は何だかんだ一度も勝てていない条件…そしてこの手の気性難馬の連戦凡走はつい先日NHKマイルCグランアレグリアであったばかり…能力的にはG1でもと思わさせる馬ですが、それを引き出せる状態であるのかの精査は必要です。
前走京王杯SCでそれをマックスに引き出したレーンJが他に渡ってしまうのは額面以上のマイナスで、乗り越えるべき壁は低くない。


―モズアスコット牡5坂井瑠58矢作(栗東)
まずは前走マイラーズC時の予想見解を参照↓
『コノ馬の充実の4歳春シーズン(まで)を思えば、4歳秋シーズンは2着好走したスワンSを含めて“アラアラ”でした。
そのスワンSは色々敗因はあったにせよOP昇級後では最低のパフォーマンスで、マイルCSにしても不利はあったにしても本来の走りでなかったですし、その不調を引きずったままの海外遠征でも惨敗。
元より気性的に難しい面も抱えるフランケル産駒だけに、そこからの立て直しは簡単ではないはずです。実際に陣営からもこの中間から気難しさが出てきたとの談で、それにより太目も残って出てきそうな情勢です。
基本的に初戦から仕上げない傾向ある矢作厩舎の見え見えの叩き台であることからも、飛ぶ可能性が最も高いのはコレと見ます。』
・・・
結果的には当時有力馬診断記事のタイトル「ソウルスターリング・ミスエルテ・シグナライズ…プッツン危惧血統フランケル産駒で初不振からの即立て直しは果たして?」の通りで、右回りや矢作厩舎休み明け云々や展開不利もゼロでは無かったかも知れませんが、何よりも根本にはフランケル産駒としての気性的限界を指摘せざるを得ないです。
上で名前を挙げた馬たちも一度崩れてからはかつての輝きを取り戻せていないワケで…それに準えればモズアスコットのこの先も暗雲が立ち込めていると言わざるを得ません。休み明けを叩いて2戦目で一変が見込める系の考え方はできません。



開幕週で高速決着必至!
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