キムラヨウヘイ 毎日王冠の有力馬診断の総まとめ

※印は[★激走候補~△やや有力~▽やや軽視~―無印」を表します


●レース傾向
3年前までは同週開催の京都大賞典と毎日王冠でメンバー二分していたが、近年となっては毎日王冠がG1天皇賞秋への唯一無二の王道ルートへとなりつつあります。
それに伴って毎日王冠に出走するメンバーの質は年々高まりつつありますが、ただしそれらの高レベル出走馬が意外な程にココでは結果を残さないという…更には次走G1秋天激走馬は、寧ろこの前哨戦G2毎日王冠凡走馬の方から多く輩出されるというパラドキシカルな現象になっています。

それは何故かと言えば…それだけ次走以降の本番G1戦線を本気で視野に入れている強豪馬こそココは次を見据えた・消耗しない・温存競馬をしがちであり、力量差大きくともココを本気で勝負しにきた格下馬にチャンスが巡ってくるという話でしょう。

一昨年こそ異例の外差し馬場で後方競馬の人気馬に展開が巡ってくるという特殊事例となったが、それ以前はほぼ一貫して“スローペース前残り展開”で、単純化すれば“後方競馬の人気馬=危険人気候補馬”“前目競馬の伏兵馬=穴激走候補馬”に近いという一戦でした。

もう一つ面白い話は、近10年の毎日王冠の3歳馬成績は他年齢馬成績に対してトントンくらいですが、実は[非上位人気馬(弱い馬)の好走率>上位人気馬(強い馬)の好走率]というパラドキシカルな結果となっています。
具体的には上位人気(3人気内)馬は[1-1-0-5]で、非上位人気馬は[1-2-0-4]で、前者の好走馬は共に先行馬でした。

コレも上の話と同様に、本気でこの先を見据えてしまう馬は危険人気馬傾向で、力量劣ってもココで勝負しに来る馬は激走傾向だと言えます。


▽カツジ牡3松山55池添兼(栗東)
本年出走予定の3歳勢の中で、上記ポイントから導ける激走候補としては…非上位人気の3歳馬で、ココで結果を残したい意図が強くて、そして本来先行脚質のカツジが真っ先に挙がります。
ただし、これまでのベストパフォーマンスであるニュージーランドT1着にしても、嵌まった感が強い内容で、果たして力量的にどの程度かというのは疑問も残ります。そのNZTでは先行競馬から一転して追い込む形だったが、このホワイトマズルの血が入るというのはスマートレイアーなんかが典型と思うが逃げたり追い込んだり極端な形で結果を残すという傾向は確かに認められて、そんな状況有利と位置取りショックありきの激走という見方もできますので。
近2走連続でスタート後手気味になっている点からも、必ずしも先行競馬を見込める馬でもありませんので。
距離千八も気持ち長い印象ですし、折り合い△馬だけにスローペース距離延長ローテでもどうかです。


△ステルヴィオ牡3ルメール55木村(美浦)
2歳時の小回り1800条件のコスモス賞でも重馬場小回りコースが忙しくての辛勝止まりで、3走前スプリングSにしてもペースが軽かった分で忙しさは目に見えませんでしたがそれでも加速遅れての完全に脚を余す差し競馬での力の違いでの勝利で、前々走皐月賞はそこに雨馬場の悪材料も重なった分で届かずの結果に。

大箱コース・良馬場がベストで、今回の東京千八良馬場コースというのは申し分のない条件になります。
ただし、この手の奥の深そうな上位人気3歳馬が、取りこぼす傾向が強いのがこの毎日王冠というレースです。
これまでにも差し遅れ競馬が目に付く馬だけに、尚更それが懸念されるトコロです。


△ケイアイノーテック牡3藤岡佑56平田(栗東)
NHKマイルCは直線で大分ゴチャ付いたレースで、ザックリと言えば上中位人気馬の中で直線スムーズな競馬ができた馬が1~4着馬で、逆に上中位人気馬でそれが叶わなかった馬は全て5着以下に沈む結果でした。

ケイアイノーティックは他有力馬が馬群内で苦しむ中での外差し…レッドヴェイロンが内に対してタイトな競馬をして他馬を潰してくれるのを後目に、そしてレッドヴェイロンとて修正動作が入りつつの追い方でしたので、更にその外から差す形のケイアイノーティックには漁夫の利という側面もあったと思います。

その前走で追い込み競馬に境地を見出したとなれば、秋初戦も当然その方向の競馬になるでしょう…それは上記の通り良い傾向とは言えない3歳馬の方になります。


―アクションスター牡8大野56和田勇(美浦)
OP特別よりも分不相応にG2に使われるコトが多いが、それはOP特別でも勝負にならないからという逆説的な話だろう…15年から新設された特別出走奨励金がほぼ無条件で交付されるG2に出た方が、OP特別で頑張って上の着順を目指すよりも結果稼げる期待値が高いと陣営内で位置付けられる程度の馬だというコト。
適条件のOP特別をスルーし続けて、この期に及んでも分不相応なG2に出走させる時点で、奨励金目当ての意向強い=好結果は目指していないという本気度の低さが窺い知れる…毎度のコトですがこうとしか書けません。。。


―サウンズオブアース牡7田辺56藤岡健(栗東)
まずは一昨年有馬記念8着後の回顧文を参照↓
『これは完全に状態落ちが主因だったと見て良さそう。
昨年と同ローテながら1本少ない追い切り過程だった事実や、デムーロJの「前走JCで走り過ぎちゃった」というコメントもそれを裏付けるモノ。
去年も今年も、天皇賞春の後には大きなダメージが残ってしまい、そこから結構な間隔が空く秋復帰戦の京都大賞典でも調整遅れで万全の状態で挑めていない様に、疲労面での体質の弱さが付きまとう馬でもある。
古馬になってから連戦での連続好走歴はゼロ。
これまでの経緯からすると、春初戦も完全にリフレッシュできて万全のデキで出てこられるかも少し怪しいので注意が必要。
疲労面を重視して1シーズン1度の激走タイミングを見極めたい。』
・・・
昨シーズン初戦札幌記念では4着好走
2戦目京都大賞典では横山典ヤラズ=馬自身の状態に問題有りでの大敗劇
3戦目ジャパンCでは京都大賞典と同様に馬が全く反応せずで連続大敗劇
4戦目有馬記念では連続大敗後で余力あったのか7着善戦

つまりは、元来の虚弱性に加えて高齢による影響もあってか1度走ったら当分走れない位に考えて良い馬なのだと思います。
そして、その1度に限れば、昨年にしても札幌記念で詰まり4着健闘、そして好メンバー揃いの有馬記念で7着という及第点パフォーマンスは繰り出せる現状です。

それが起きたのが前走札幌記念4着だと言って良いでしょう。
展開に恵まれたとはいえども、強敵相手での好結果でしたので大健闘です。

それが今回も繰り出せるならば好走圏内の計算ですが、コノ馬の過去を振り返れば激走後のタイミング、特に非休み明け初戦の中6週ローテのタイミングではそれはナイという見方になります。


★ダイワキャグニー牡4横山典56菊沢(美浦)
コノ馬の特徴としては、右回りがカラッキシというのと、菊沢調教師も予ねてから『男馬だけどやっぱり繊細部分あって幼児を育てる風に』などと言っている様に気性面の問題と体質面の問題から連戦で頑張れる馬ではないという2点があります。

上記をデータとして出すと以下の通りです
右回り[0-0-0-2]⇔左回り[5-0-1-3]、
中6週以上[5-0-0-0]⇔中5週以内[0-0-1-3]

4走前中山金杯については不得手とする右回りが大いに響いたモノであり、また次走以降東京マイル路線が決まっている中での試走感MAXのレース参戦だった分もあったでしょう。

その次走東京新聞杯でリスグラシュー・サトノアレスというG2級馬に次ぐ3着好走、そしてOP特別ではライバル馬をキチンと下す力の違いの勝利…やはりこの左回り条件ならばキチンと重賞級馬だと言えます。

前走エプソムCはダービー惨敗以来となる中2週ローテで馬が走れる状態になかったのが全てと見ます。

昨年毎日王冠でも◎打ったのですが、当時は北村宏Jが明らかに後続を待ち過ぎた分での4着でした…3走前東京新聞杯も同様にキレ負けの嫌いある3着でした…ただしその癖を掴んだ横山典J継続騎乗ならばそんな安易な負け方はしないでしょう。
上記の通り強い馬が勝つレースではなく、上手く乗ったモノが勝つレースですので、そこでレースの格を問わずに後先考えずのメイチ騎乗をしてくる横山典J騎乗ならば一発も期待できます。


※横山典のレース格別の戦績(17年以降)
G1…20戦2好走(連対率10%)
G2…25戦10好走(連対率40%)
G3…44戦16好走(連対率14%)
その内、道中5番手内時には、非上位人気馬ばかりにもかかわらず11戦7連対で、5着以下に飛ばしたのは僅かに1度だけ。
他の多くの騎手が本番見据えた騎乗をしたい前哨戦G2こそ、世俗に縛られないスタイルの横山典の騎乗術が生きる。



▽キセキ牡4川田58中竹(栗東)
前々走日経賞は大外枠から我慢し切れずに外捲り失速劇。
前走宝塚記念は一転して後方ままの競馬での凡走。
その前走でも最終追い切り一杯調教でしたが、今回も2週続けての単走一杯調教。これは角居厩舎(※中竹B厩舎ですが実質角居厩舎)としては異例というか、通常ではない調教パターンです。
精神的なリズムを崩している馬に対しての対処療法的にも思える調教過程だけに、あまり信頼したくありません。
また、デムーロが乗れるからとの理由で京都大賞典ではなく毎日王冠に向かったという経緯も、勝負気配という点では見劣りします。


★アエロリット牝4モレイラ55菊沢(美浦)
前々走VMでは、これまで全戦騎乗横山典Jの手綱が離れるというマイナス要素と、それに加えて馬の持ち味を引き出せない戸崎Jの手綱というマイナス要素があり…騎手のさじ加減一つで激走まであったと見ていますが、出た結果としては4着止まりという残念なモノに。

まあ、戸崎Jじゃなくても暴走馬にテン乗りでは誰でも慎重な騎乗になるのは仕方無いですが、あんなスローペースを2番手からという正攻法競馬では…それが難なくできる馬ではありませんので折り合い面で怪しい所は見せつつでしたし、そしてそんな位置取りから数多のキレ自慢馬を抑えての最先着が本当に想像できたのでしょうか???

前走安田記念では相手強化にもかかわらずMHペース先行で2着激走…コレがコノ馬の本質です。
戸崎Jでも騎乗2戦目ならば流石に…だったのか、又は単純に回りがペース速くなったのが功を奏したのかは分かりませんが、これは馬の良さを引き出す騎乗になっていました。

コノ馬が本当に強かったのは暴走逃げをさせたクイーンSと大胆な外目2番手競馬NHKマイルCSとMHペース先行の安田記念です…こういう競馬一本しか選択肢が無いという点で不安定な戦績になるのかも知れませんが、それさえさせてあげられれば常に強い競馬はするでしょう…問題はそれができるのかできないのかでしたが、安田記念後に『例えば戸崎J騎乗で秋前哨戦とかならこれより抑える競馬をして過信禁物になるでしょう』と書いたのですが、モレイラ起用ならばその心配は無用です。


▽サトノアーサー牡4戸崎56池江寿(栗東)
前走エプソムCは開催終盤馬場に一雨あって一気に外有利へと化した馬場バイアス。そんな状況が最も有難かったのは大外枠差し馬サトノアーサーに違いないでしょう。大外枠だった分かスタートの出も良くて、また雨馬場だった分か道中も好位で折り合う新境地競馬でもありましたが、あとは枠なりに外を回ってくれば良いだけという簡単な競馬でした。

それ以前はつい2走前メイSでも折合欠き気味でしたし、ペースや馬場次第ではやはり折り合い面に大分気にした競馬となる可能性は高いはずです。

外差し馬場で外差し決めた馬を、同舞台だからと言って馬場もペースも違うココでも評価するワケには…。


▽サンマルティンセン6池添56国枝(美浦)
まずは昨年小倉記念時の有力馬診断を参照↓
『搭載しているエンジンは重賞級。
前走準OP勝ちにしてもトップジョッキーの腕を以てしてでも折り合い付けるのに相当苦労して、最大パフォーマンスの何分の一かの走りで勝ち切るという省エネ辛勝だった。
前走は左回り外回りコースだったが、乗り易さで言えば右回り小回りコース替わりはプラスに作用するはずで、まともならば即重賞で結果を出せても良い馬だ。』
・・・
その昨年小倉記念は右回り小回りだった分で最大パフォーマンスを余す所なく出せるという状況で、そして上記のハイペース展開により暴走・暴発も防げるという好シチュエーションで、完全燃焼に近い2着だったかと思います。
ただ、完全燃焼とは言えども完璧だったワケではなく、それは自身のレース振り限定されるせいだが勝ち馬に対して不器用で荒い競馬になった分での敗戦だった感は否めません。

3走前福島記念は枠順が外に追いやられて&ペースがスロー寄りに流れた分での折り合い破綻自滅凡走。

2走前都大路Sは今後はペースが流れてくれた分で後方折り合い専念からの完勝。

前走小倉記念はまたもペースがスロー寄りに流れた分で、そこで自在に動けぬ弱みを見せての後方ままの敗戦。

まとめると折り合い面が全てと言える近況で、スローペース濃厚のココは有難い場面ではありません。それに加えて左回りにも難があるだけに・・・。


▽スズカデヴィアス牡7三浦56橋田(栗東)
まずは前々走函館記念有力馬診断を参照↓
『常にそれなりの着順にはまとめていますが、コノ馬も右回りには少々怪しい所あります。
前々走小倉大賞典3着後には「直線手前での故障馬接触不利あって、完全に差し遅れる形での滑り込み3着好走。ただ、それが無くとも右回りでは差し遅れる形になりがちという馬」と書きました通りです…直線の短い函館コースでそれをどうカバーするのか三浦Jの腕に懸かっています。』
・・・
前々走函館記念では結果的にも上記の通りだったと思います…上がり上位の走りで追い込みながらも僅かに届かず掲示板止まりに。一見すると騎手に敗因を擦り付けたくなる負け方ですが、こういう右回りで下手な競馬になるのは平常運転というコトです。

今回は左回り替わりはプラスで、前走札幌記念の様な重いレース質は合わないようなのでその点でも条件好転はあります。

ですが、新潟大賞典は新潟外回り二千重賞らしい“全馬外回しで内が恵まれる”というレース展開にも恵まれた最内枠からの1着で…やはり能力的には劣ります。


―レアリスタ牡6石橋脩56堀(美浦)
OP昇級後はキャピタルS好走→中山金杯大敗→メイS凡走→新潟記念大敗という戦績。
その中山金杯については不得手とする右回りが大いに響いたのと、それに加えて間隔詰まるローテも駄目なタイプですので、右回り・連戦というそもそも走れなかった局面でした。
そのレースまでは休み明け初戦且つ左回りでは5戦4勝3着1回というパーフェクト戦績。
それだけに、その条件が揃っていた一戦だった前々走メイSでも走れなかったのは大分残念…その敗因を指摘するとすれば折り合い面でした。
本来ならば休み明け初戦では落ち着いて走れるはずですが、そのメイSでも新潟記念でも駄目だったとなると、気性面で不安定さが発露した状況と読めます。
その上で、間隔詰めて臨むココは進展あるとは…