キムラヨウヘイ 高松宮記念の有力馬診断の総まとめ(前編)

※印は[★激走候補~△やや有力~▽やや軽視~―無印」を表します

―キングハート 牡5 北村宏 57 美南 星野
前々走は始動戦馬受難傾向のシルクロードSで休み明け初戦凡走という経緯。その上、コノ馬の場合には帰厩後にも脚元不安残っていた模様で本来の形ではない坂路調教のみで仕上げられていたというワケ有り要素もありました。

それに対して前走オーシャンSでは通常通りのコース追いを取り入れられており、結果的にはなんてコトは無い攻め強化での休み明け2戦目での一変劇でした。
ただ、6着馬までが0.1秒差内にひしめき合う大混戦で、中枠先行からの完璧に流れに乗る騎乗あってこその勝利なので価値は微妙です。

前走が攻め強化で一変した経緯からも今回も調教過程を重視したいですが、1週前追い切りは15-15に近い様な手控えたモノでした…このタイミングで調教緩められてのG1挑戦では食指は動きません。


―ジューヌエコール 牝4 福永 55 栗東 安田隆
4走前函館SSは超高速馬場化に伴る超速レコード決着に…それを味方にできるのは誰なのかと言えばやはり斤量が軽い馬が有利になるワケで…それにドンピシャ乗っかっての1着となったのが唯一3歳牝馬で斤量50のジューヌエコールだったというコトでした。

そのレース後には『ただし、距離1200ならば快進撃が続くのかと言えばYESとは言い切れなくて、距離短縮よりも前に滞在競馬の影響なのかこの中間はとても馬がリラックスしていて力を出し切れる状態にあったというのも大きかった模様。それでも距離1200のHペースでも中々の行きっぷり良い競馬だったので、これが非滞在競馬やHペースでない競馬になった時に同様の優等生競馬ができるのかは未知数な面も。』と書きましたが、やはりその後のレース振りを見る限りでは非滞在競馬や距離千四となると結構な注文が付く印象は否めません。
そして、そんな距離の問題や気性の問題では片づけられない不調が隠せないというのが前々走距離千二大敗でした。

本調子ならば、そして距離千二ならば決して弱い馬であるはずが無いのですが、一頓挫あってからは厩舎陣営も常に弱気コメントで、前走にしても『函館SS時までは状態戻らない』『次に繋がる競馬を』という連続凡走結果を出した昨秋同様のコメントで不振結果を脱せずで、まだ復調の手掛かりない現時点では手を出し辛い存在です。


▽ネロ 牡7 ミナリク 57 栗東 森
コノ馬を管理する森厩舎と言えば“賞金至上主義”で使い倒すレース起用で知られているが、それにも関わらずコノ馬の昨春シーズンは、帰厩してから長い期間に渡って在厩調整を続けながらも態勢整わずに1度もレースに使わなかった(使えなかった)というのは異常事態=相当深刻な状態だったのだろう…約3か月半の在厩調整を経ても尚見切り発車だったという5走前3人10着を含めてその周辺の連続凡走については状態面が全てと見做して良いはず。

そこから長い期間とレース数を経て復調を見せたのが3走前で、そして復活を遂げたのが前々走京阪杯1着と言って良いのではないでしょうか。
そこで期待した前走オーシャンSですが、Hペースで逃げて0.1秒差4着ならば悲観すべき結果ではありません。
そもそも、コノ馬がOP昇級後に強い競馬をしたのは、15年京洛S0.6秒差圧勝にしても16年京阪杯0.7秒差圧勝にしても重馬場条件でした…逆に言えば良馬場では前走くらいが復活した今でもMAXのパフォーマンスと見るべきでしょう。

また、上記した通りの“賞金至上主義”のレース起用の森厩舎ですので、前走オーシャンSも叩き台というよりも本気度ある参戦だったと見ますし、このG1に向けての上がり目等は他よりも期待し辛いです。

もし重馬場不良馬場ならば本気で考えたいですが、良馬場G1では底を見せている馬だと思います。


―ラインスピリット 牡7 森一 57 栗東 松永昌
昨秋京阪杯から前々走淀短距離Sまで異例の3戦連続◎を打った馬…コノ馬のポイントは“良馬場向き=雨馬場・荒れ馬場不得手”“寒い時期に馬体重増時に好調=暑い時期に馬体重減時に不振”の2つです。

目論み通り馬体重増(プラス14キロ)で出走叶った3走前京阪杯が好調突入のサインで、その後は馬体重維持で2連続好走を果たしました。
ただし、少し暖かくなった気候と、輸送競馬の分もあったのか前走オーシャンSでは馬体重減(マイナス8キロ)で着順を落としました。
それに加えて不得手とする荒れ馬場と直線窮屈な態勢での0.2秒差ならば決して見限れない結果なのですが、昨年も春馬体減敗戦を皮切りにズルズル落ちて行った経緯だけに…コレが間隔を空けてのローテならば再度の期待の可能性もありましたが、今回は恐らくG1だからという理由での中2週ローテの輸送競馬…つまりは嫌な予感大の場面というコトです。


▽レーヌミノル 牝4 和田 55 栗東 本田
まずは前走オーシャンS時の有力馬診断を参照↓
『(略)血統面から見出せる短距離資質、そして前回スプリント戦出走の2歳夏小倉2歳Sでの圧勝歴からの期待なのでしょうが…それがあっても古馬スプリンターとして大成する為に必要不可欠であろう“育成”面がスッポリと抜け落ちているというのは小さくは見積もれない点であると考えます。

仮にコノ馬が秀でたスプリント資質の持ち主だったとしても、この手の馬は否が応でも2歳秋~3歳春までは不本意な距離路線起用とそれに向けての教育を強いられるのが今の日本競馬になっているのです(スプリンターがスプリンターとして早い段階から活躍できる環境=番組がほぼ存在しない)。

まして、コノ馬は3歳春までではなく、その後の3歳秋の秋華賞まで本気で距離延長路線克服を目指してきたという馬ですから…そこからのスプリント路線転向というのは決して小さくないギャップですから、それを“本来スプリンターだからスプリント路線に戻れば自ずとやれる”とのロジックは、育成面での空白期間の存在から容易には成立しない可能性は指摘しなければなりません』
・・・
そのオーシャンSでは3人気6着止まり…周囲の期待・予想に反して、短距離路線に歩を進めてから2連続人気裏切りという結果です。
コノ馬の本質的な適性についてですが、そもそも2歳時から「オークスまでOK」が陣営の合言葉でした…それはリップサービス込みとしてもマイラーであってもスプリンターであるのかは大いに疑問アリです。
その上で、上記の通りの非スプリンター教育を延々されてきた馬ですから、仮に本質的スプリンターだとしてもまだ鍛錬足りぬ今の段階でのスプリントG1制覇は時期尚早と見ます。


▽レッツゴードンキ 牝6 岩田 55 栗東 梅田智
レーヌミノルと同じく後の短距離路線転向を期待されていた桜花賞馬レッツゴードンキですが、これについても当初(4歳春)からスプリント適性に疑問を呈し続けてきました。
コノ馬も短距離路線転向初戦の阪急杯では2人気6着止まりで、次走高松宮記念でも8着止まりで、その後の格落ちG3戦でも3着が限界で、ただスプリント教育を続けてきた成果で1年後の5歳時には春秋スプリントG1連続2着までスプリンターとしての成長を見せるに至ったとの解釈をしたいです。
ただし、だからと言って本質的にスプリンターかと言えば否ではないかというのが私の見解で、昨年高松宮記念にしてもスプリンターズSにしても“いわゆる”G1らしくない非急流ペース戦でスピードが問われ過ぎなかった故に何とか間に合ったというのが真相ではないでしょうか。

上記を踏まえれば、この前走ダートG1で差し経緯馬からの距離短縮ローテは良いとは言えないですし、海外遠征明けの6歳牝馬で従来通りの能力を見込んで良いのかは必ずしもではないでしょうし、また本質的な適性から善戦まではあっても激走までは無いと見ますので・・・。


★ナックビーナス 牝5 三浦 55 美北 杉浦
コノ馬は常々“距離1200で内(イン)で競馬をすればパーフェクト戦績”と書いてきました…それには非内(非イン)の競馬をするとすぐ気を抜きがちで力を出し切る競馬が難しいからなのですが、その意味で近2走は共に痛恨の7枠からの競馬で決して真面目に走り切った競馬では無かったと思います…それでも僅差入線は偏にコノ馬の地力によるモノであると。
そういうタイプだけに常に1着は遠いワケですので、コノ馬にとって2着好走というのは勝ちに等しい競馬はしているというコトになります。その着差0.1秒差内の2着3着はこれで実に近1年で5度目にも…そんなコノ馬の惜敗力は相手関係が手強くなってこそ妙味・魅力を見出せてくる要素と言えるでしょう…全力を出し切らずにOP特別&G3レースで2着3着を量産という経緯…それならば仮にG1レベルにまで相手強化されても、それ以前の格下戦と案外遜色無い好着順結果を残せるという可能性はアリと言えるのではないでしょうか。
それは良績の中山1200のG1スプリンターズSなら尚良かったですが、このG1高松宮記念でも理想内枠競馬ならば侮れぬ一頭になってくると見ます。


★ソルヴェイグ 牝5 田辺 55 栗東 鮫島
コノ馬は昨年スプリンターズSでも『最も◎を打ちたい馬』と書いたのですが、レーティング順であと1頭のトコロで除外…。
そして今回高松宮記念でもレーティング順でも賞金順でも共に現状あと1頭のトコロで除外対象という出走黄色信号馬です。
(※何だかんだ約1頭はアクシデント回避馬が出るモノだと思っているので、週始時点で除外対象でも1~2番手までの馬についてはココで取り扱う対象にしています。)

そのスプリンターズS除外を受けてのスライド出走となった3走前では、絶好調を維持できなかったという話でしたがソラを使いながらの横綱競馬での勝利…もしスプリンターズSに出走叶っていれば(当時の内前有利バイアスからも)結構面白い競馬ができたはずと本気で思っています…。

その後の2走は状態面と条件不適もあって結果を残せずでしたが、昨春始動戦でも同様に不可解な凡走を喫してからその後復活走している通りで、パンパン良馬場スプリント条件ならば一変可能性は十分でしょう。

除外対象ながら田辺J確保は意欲の表れですし、もしも出走叶うならば本気で検討したい大穴候補です。。


━━━(後編)へ続く。